山地修裁判官、大阪府池田子ども家庭センター(児童相談所)一時保護違法判決
大阪地裁の広報が判決文の公開を検討しているらしい。
生後間もない子と約8カ月離ればなれになった大阪府内に住む30歳代の母親が、大阪府池田子ども家庭センターの対応が違法だと訴えた裁判。
母親は夫と同居していない。
山地修裁判官は大阪府池田子ども家庭センターが家裁の忠告無視した点を指摘した。
家庭裁判所の指摘があった後、速やかに他の医師の鑑定を求めていれば一時保護の必要がないと認識できた。
2カ月間の面会制限についても行政指導なのに、事実上強制的に行われた。
一時保護を継続したこと、面会制限をしたことを違法と認定した。
山地修裁判官は判決後、大阪法務局に異動となり大阪法務局長に就任。
生後1カ月の長女が頭からフローリングに落ちてしまい、母親はすぐに119番通報。
長女は病院へ運ばれた。診断の結果、長女は頭の両側が骨折して入院。
事故から2日後に長女は大阪府池田子ども家庭センターに一時保護された。
大阪府池田子ども家庭センターの判断だけで2カ月間一時保護が認められている。
母親は毎日病院に通い、1日12時間の看病を続けた。
入院から16日後、母親は大阪府池田子ども家庭センターに呼び出された。
鑑定の結果、1回の落下では2箇所の骨折は説明できないとの速報が出た。
母親は長女と面会できなくなり、長女は保護施設へ移る。
2カ月を超えて一時保護を延長する場合、家庭裁判所の審査が必要。
児童相談所は虐待が疑われるなどとして一時保護の延長を家庭裁判所に申請。
審判で大阪府池田子ども家庭センター側の医師(赤十字病院か?)の鑑定書が提出された。
理由の記載はおよそ1ページ。
虐待を疑った根拠を示す画像や医学文献は記載されていない。
一方、母親も脳神経外科医に鑑定を依頼。
赤ちゃんの頭蓋骨はたわむという特徴的な特性があるので、1回だけの頭部外傷でも両側に骨折生じる可能性があるとされた。
家庭裁判所は医師の鑑定も踏まえ、母親の説明とケガの状況は矛盾しない、母親に虐待傾向は一切見られず説明も一貫していると指摘。
医師の鑑定が信用できるかを検討し自宅引き取りに向けた準備の期間にするという理由で2カ月の一時保護の延長を認めた。
大阪府池田子ども家庭センターは長期間の施設への入所が必要だとして、家庭裁判所に審判を申し立て、審判の間、一時保護がさらに続いた。
審判が始まっても大阪府池田子ども家庭センターからは新たな証拠の提出もなかった。
裁判官の勧告により、大阪府池田子ども家庭センターは審判を取り下げた。
一時保護からおよそ8カ月が経っていた。
なぜ一時保護されたのか、なぜ面会制限されたのか、なぜ一時保護解除してもらえなかったのか。
大阪府池田子ども家庭センターは家庭裁判所で具体的に示された検討をしなかった。
家庭裁判所が鑑定書の信用性、故意の虐待の可能性について検討を求めた意味が分からなかった。
ケガの原因が分からず、虐待の可能性が疑われるとして継続された一時保護。
家庭裁判所の忠告があった後も、大阪府池田子ども家庭センターはケガの原因を調べていなかった。
国会で児童福祉法改正案が提出された。保護開始から7日後までに児童相談所が一時保護状を請求し、裁判所の承認を経て2カ月間の一時保護が認められる制度が追加された。
家庭裁判所は母親側の主張や母親側の医師の鑑定書の内容を踏まえたからこそ、児相の判断に疑問が投げかけられた。しかし「当事者の言い分を聞く」という当然必要とされる仕組みを設けていない。
厚労省の検討会や審議会でも疑問の声が続出したが、厚労省からは具体的な説明がほとんどなされないまま令和4年3月4日に法案が提出された。
●国連
最初の2カ月間、児童相談所の判断だけで一時保護を行うことが認められている日本の制度は、
「児童の権利条約」に違反している。
●和田一郎教授(花園大学)
必要なのは役割分担。通告受理から支援まで全て児童相談所が担っているのは日本くらい。
児相職員の数も非常に少ない。システムは破たんしている。
48時間といった一定期間を超えて親子を強制的に引き離すのは、大きな人権制約になるので、
福祉機関である児童相談所ではなく、司法(裁判所)が主体的に担うのが国際常識。
児童福祉法改正案についても司法の関与があまりに弱く、児相が主体のままで役割分担になっていない。
これだと今後も子どもの権利は守られない。
●井上武史教授(関西学院大学)
児童福祉法改正案は保護者の意見を聞く機会がないまま2カ月間も強制的に保護ができてしまう制度になっていて、憲法上も条約上も問題がある
●吉村洋文知事
また一つ、児童相談所が機能不全に陥っている実態が明らかとなった。
背景の一つには、虐待通告受理・介入(一時保護など)・家庭支援を全て児童相談所が担っている「制度の問題」がある。
※児童相談所の調査権限、調査能力が弱く、裁判所が職権による事実調査、証拠調べを実施しなければ児童虐待の事実確認は不可能である。
※児童相談所に対しては判断の正確性より迅速性が求められている。最悪の事態を想定した児童相談所の慎重な危険回避の判断に誤りはない。
※裁判所に対しては判断の迅速性より正確性が求められている。職権による事実調査、証拠調べによる正確な判断が求められ、それには児相判断の修正も含む。
※母親側の鑑定も児童虐待でない可能性の1つが指摘された程度であり、児童虐待の有無を判断する上での必要十分な事実調査はなされていない。つまり裁判所が一時保護の必要性がないと判断するだけの科学的根拠がない。児童虐待防止の観点で非常に危険。
※裁判所が職権による事実調査、証拠調べに基づく正確な判断を行っていないことが一番の問題
。
※児童虐待事件への司法介入が少ないのが一番の問題とされる。
※今回の児童福祉法改正にも大きな意味がある。一時保護の責任が裁判所にあることを明確にしたことは大きい。調査の不作為による判断の誤りの責任を裁判官が負うことが明確化され、裁判官は戦々恐々となっている。
※児童虐待問題は司法改革の要である。
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