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判検交流について、第174回国会法務委員会第4号の抜粋

判検交流について、

第174回国会 法務委員会 第4号
平成二十二年三月十二日(金曜日)午前九時開議

でのやりとりの抜粋です。

中島(政)委員 → 中島政希
千葉国務大臣 法務大臣 → 千葉 景子
大谷最高裁判所長官代理者 → 最高裁判所事務総局人事局長 大谷 直人
※現在の最高裁長官です。


【中島(政)委員】

 いい機会をいただきましたので、今話題になっている判検交流のことをちょっときょうはお聞きをしたいと思います。

 判検交流というのは、御存じのように、裁判官と検察官が行ったり来たりする話なんですけれども、最高裁から見れば、法務省の方へ出向する、こういうことになるわけですが、最高裁の方に伺いますが、ことしの判検交流の実態、訟務検事、そのうちどのくらいいるか等、実態をお聞かせください。

【大谷最高裁判所長官代理者】

 最高裁の方から出向しているということでの数を私の方から申し上げたいと思いますけれども、本年度で申しますと、法務省に出向した裁判官の数が全部で二十九名ということでございます。

【中島(政)委員】

 両方合わせると五十名以上になっているということだと思うんですね。

 これは、私が調べましたら、昭和二十年、三十年代というのはほとんど一人、二人ですよ。それが、三十年代、四十年代、だんだんふえていって、それでも一けただった。それが、四十年代の後半になりますと二けたになるんですね。どんどんふえていきまして、二けたも、十人が二十人、二十人が三十人、三十人が四十人となって、去年あたり、判検交流は五十六、七人だったと思うんですけれども、あっという間にふえちゃった。

 ふえ出したのが昭和四十年代の後半、五十年前後なんですけれども、この時期にどうして判検交流がふえ出したのか、教えてください。

【大谷最高裁判所長官代理者】

 いわゆる判検交流につきまして、これを定めた何か根拠規定のようなものはございません。

 今お尋ねの点ですけれども、こういった法曹間の人材の相互交流というのは相当以前から行われていたものと思っておりますが、その交流が開始された具体的時期等につきましては資料がございません。申しわけございません。その点についてはお答えしかねるというところでございます。

【中島(政)委員】

 おかしな話なんですね。

 昭和二十二年に戦前の裁判所構成法が改正になりまして、裁判所法と検察庁法に分かれたわけですよ。そのときの立法の趣旨というのは司法と行政とを分けるという趣旨であったので、だから、二十年代には判検交流なんかなかった。四十年代後半になってふえてきたわけですね。国を相手にした訴訟がふえてきたりなんかして、民事に強い検事がいないので裁判官から補充するというようなことだったらしいですけれども。

 それにしても、こんな三権分立の基本にかかわることなので何か根拠があるんだろうと思って、私もいろいろ調べてみました。最高裁から規則集も借りて、こんな厚いのをよく見てみましたけれども、どこにも書いていない。こうした大事な問題がいつ始まったのか、何を根拠にしてやっているのか、全然わからぬと。まことにおかしな話だと思うんですね。

 新聞等で探してみますと、昭和四十年代の後半、四十九年ぐらいの新聞だったですかね、そのときに訟務検事の必要性がふえてきたので、法務省の方から裁判所に要請があって、最高裁と法務省が話して、三年したら戻ってくる、そういう細かいことまで決めて、この交流が拡大したという報道を見かけました。ただ、その報道を裏づけるような、役所側のあるいは裁判所側の資料とか覚書というようなものはないんですよ。

 では、これは口約束でこの交流というのはやっているんですか。最高裁にお聞きします。

【大谷最高裁判所長官代理者】

 大変申しわけございません。

 先ほど申しましたように、その当時のことについて、私どもではちょっとつまびらかにできないということをお許しいただきたいと思います。

【中島(政)委員】

 これは戦後、憲法ができて、司法権と行政権と分かれて、それぞれしっかりやっていくということですよね。三権分立になったわけですよ。戦前は、これは皆さん御承知のように、検事も裁判所も一緒だった、司法省の中にあった。司法省の中に裁判所もあり検事局もあった。これを、新憲法ができる過程で、戦後改革で分けた。この三権分立という日本の国の基本にかかわることだと思うんですね。

 戦前のように、知らない間に判検交流が何十人もふえていって、判事と検事が行ったり来たりしている、こういう状況なのに、何もないんですか、これについて。法務省と最高裁で話し合った文書とか、あるいは最高裁の中で裁判官会議で決めたとか、何かあるでしょう。ないんですか。何もないんですか。見つからないんですか。最高裁に聞きます。

【大谷最高裁判所長官代理者】

 御質問の点については、特にございません。(発言する者あり)

【中島(政)委員】

 これはまたおかしな話で、私も与党ですからね、野党だったら声を大きくしなきゃいけないところなんですけれども。

 しかし、これは大事な問題だと思うんですね。裁判所と法務省と、これは普通の役所じゃないでしょう。外務省から経産省に出向するというような話じゃないですよね、これは三権で別になっているわけですから。

 これは、行き来するについて口約束ですか。法務省の方から、国を相手にする訴訟が多くなって民事がわかる人がいないからちょっと検察に人を出してくれよと裁判所に頼んで、はいそうですかと、こうやって裁判所がこたえたのか。こんな口約束で三権のうちの二権の人のやりとりをやっていていいものなんですかね。

 私は、これは法治国家として、また憲法の建前からいって、まことにおかしな話だなと思いますね。

 法務大臣にもこの件はお伺いしたいと思うんです。

 本委員会でも、かつて南野法務大臣のときだったかな、我が党の枝野委員が、判検交流、特に検事の問題、裁判官が検事になっている、こういう問題について批判的な立場から、南野法務大臣と枝野さんが論争したことがございました。

 私も、どちらかというと、この判検交流に批判的ですし、批判的よりも何よりも、判検交流をやる、両者で人が行き来するということをいつだれが決めたのかわからない、そうした文書もない、なし崩し的にだらだら行われている。まことにおかしな事態だというふうに思います。

 新政権になったわけですけれども、この問題について、法務大臣、どのようにお考えになりますか。是非も含めて、また今後どうするかというようなこと、お考えがありましたら、お聞かせをいただきたいと思います。

【千葉国務大臣】

 中島委員から御指摘をいただきまして、私も改めてこの問題について思い起こしているところでございます。

 実は、私も、従来、判検交流ということを、本当にどうなのだろうかと、いろいろなことを考えたりしたことがあることも事実でございます。

 根拠が確かにはっきりしていないということがございまして、例えば裁判所法では、裁判官に、判事補、簡易裁判所判事、検察官あるいは弁護士、裁判所調査官等々などから採用することができるというようなことはあるのですけれども、行ったり来たりをするということが本当に根拠がどういうことになるのかということを、私ももう一度きちっと検証させていただきたいというふうに思っております。

 また、とりわけ、裁判官と検事の交流の際に、訟務について裁判官がつく、そしてまた裁判官に戻られるということが、さまざまな、やはり三権分立や、あるいは原告、被告がすぐ入れかわってしまうのではないか、こういう大変疑念ももたらすところではないだろうか。こんなことを私も認識いたしております。

 こういうことも含めて、御指摘をいただいたこういう機会に、また改めて、さまざまな取り組み、あるいはまた御提起をいただいて、検証をしていきたいというふうに思っております。

【中島(政)委員】

 今、裁判所法の話が出ましたけれども、裁判所法にも検察庁法にも、こういう人が検事になれます、裁判官になれますと、それぞれ資格は決めてあります。それは、こういう人がなれるというのを決めてあるだけで、行ったり来たりしていいということは決まっていないわけでございます。

 最高裁にもう一回聞きますけれども、この判検交流をやられている意義といいますか、意味というものが何かあってやっているんだと思いますけれども、その辺をお聞かせください。

【大谷最高裁判所長官代理者】

 お答えいたします。

 裁判官、特に判事補でございますが、裁判所の外、外部で裁判官以外の法律専門職としての経験、その他の多様な外部経験を積むということは、多様で豊かな知識、経験を備えた、視野の広いといいますか、裁判官を確保するという目的のために裁判所としては極めて有意義なことと考えております。

 司法制度改革審議会の意見書におきましても、裁判官が、これは検察官への出向も含めてでございますが、そういったいわゆる外部経験を積むということが高い資質の裁判官を確保することにとって有用であると、その実施を求めているという意見書が出されたところでもございます。

 そこで、裁判官が法務省その他の行政庁に検事として出向するということが、民間企業等への派遣、あるいは新しくできました弁護士の職務経験、さらには海外留学などを含めた外部経験という大きなプログラム、これの一つとして考えているところであるわけです。

 また、立法事務関係あるいは訟務関係等の分野におきましては、特に民事の裁判実務の経験があって法律に精通している、こういった人材としての裁判官、この裁判官に対するニーズもございますところから、これにこたえる、こういう目的もあるということでございます。

【中島(政)委員】

 裁判官や検事さんがいろいろな経験をされることは大事だと思いますよ。ただ、さっきから言っているように、それならそれで法律でちゃんと決めた方がいい。法律がだめだったら裁判所規則でもいいし、政令でもいいし、ちゃんと決めなきゃだめですよ。これはほかの省庁、外務省と経産省を行ったり来たりする話と違いますから、司法、行政、立法の三権分立の基本にかかわることですね。

 ですから、それぞれの役所で、法務省は法務省でこの件について話して大臣が決める、最高裁は裁判官会議で決めて、法務省と裁判所で公式に話し合って、覚書でも何でも取り交わして、立法府にもかかわることですから国会にも御報告いただいて、それで進めるべき問題だと思います。なし崩し的に、一人、二人だったのを出向者が何十人にもふえる、こんなことは法治国家としておかしいし、法律の番人である最高裁としてみっともない話だと思いますから、よく根拠を考えてもらって対応していただきたいと思います。

 時間が来ましたので、きょうはこの辺にしておきまして、また引き続きお聞きしたいと思います。

 ありがとうございました。

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